- えっと、また私、またわかんなくなっちゃって。
- 私がいるの、こっちなのか、そっち側なのか。
- 私、そっち側の何処にだっている。
- それは知ってるの。
- だって、繋がってるんだもの。
- でしょ。
- でも、私の、本当の私が居る所ってどこ。
- あ、本当の私なんて、居ないんだっけ。
- 私は私の存在を知っている人の中にだけいる。
- けど、それだって、今こうやってしゃべっている私は、私だよね。
- この私って、私って誰?

錯乱する瑞城 ありす(みずき ありす)。
「私がありすの為にする事って、いつも間違えちゃうね。本当に私って」
ありすを抱きしめる岩倉 玲音(いわくら れいん)。
「ごめんね。ごめんね。」
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岩倉家のいつもの日常風景。
ただ、そこに玲音の存在はない。
いつもの登校する電車の中にも、玲音の存在はない。
ありす、加藤 樹莉(かとう じゅり)、山本 麗華(やまもと れいか)は、いつもの様にサイベリアへ遊びに行こうと話す。
「じゃーメールを送っておこう」
「ありす、だれにメールを送るつもりなの?」
「またあいつ?」
登校する四方田 千砂(よもだ ちさ)を指さす。
「記憶にない事は無かった事なんだって。」
「記憶にない人は、最初から居なかったって。」
タロウとミューミュー、マサユキは荷物持ちじゃんけんで遊んでいる。
タロウのマシーンに玲音が映り込むも、誰も知らない。
英利 政美(えいり まさみ)は会社の愚痴を言いながら通りすがる。
電線工事をするカール・ハウスホッフと林 随錫(リン スイシー)。
これまでの出来事が、何もなかったかの様な日常として進む。

- きおくにないことは
- なかったこと
- きおくなんて
- ただのきろく
- きろくなんて
- かきかえて
- しまえばいい

玲音が誰もいない街で一人泣いている。
「どうして泣くの?」
「誰の記憶からも、自分を消してしまったから?」
「でも、それはあなたが望んだことじゃない?」
「誰も変な死に方なんてしていないし、誰も傷付いてないし、誰も憎んだりしない。」
「ワイヤードから、死んだ人の情報が紛れだすなんてことも、もう無いよ。」
「だから、玲音はもう何処にも居ないでいいの。」
「それが、望んだことだったんじゃない?」
「もう私は何処にも居ない。」
「何処にも居ないんだったら、私は誰?」
「私は何処に居るの?」
「ネットワークは情報を伝えるフィールド。」
「情報はそこに留まっていない。」
「情報は常に流れて機能するもの。」
「人の記憶。個人のものとか、人の歴史の中のものとか、それだけじゃなくて。」
「そう、共有されている無意識だって。」
「そんなに膨大なメモリーを蓄積できる様なものを、人間が自分で作れると思う?」
「玲音は何処にでも偏在しているもの。」
「玲音はじっと見つめるもの。」
「そうよ。玲音は神様なんだよ。」
「お父さん。知ってる?」
「私、みんなが。」
「好きだって?」
「違うのかい?」
泣きだす玲音。
- 記憶って、過去のものだけじゃないのね
- 今のこと、明日のことまで

大人になったありす。
ありすは歩道橋の上の玲音を気に掛け、話しかける。
「こんにちは。前に会ったっけ?会ったよね?」
「あ、教育実習で行った学校の子?」
「うーん。でも違うなぁ。」
「はじめまして。はじめまして、だよ」
自己紹介するありすと玲音。
ありすは玲音の名前を聞いても思い出せない。
「玲音。じゃさよなら。いつかまた、何処かで会えるかもね。」
「そうだね。いつだって会えるよ。」

- 私はここにいるの。
- だから、一緒にいるんだよ。
- ずっと。





